近年、家電量販店等で見られるポイントサービスが様々な分野で
普及し、色々なお店で、ポイントを利用しての買い物をする機会が
増えてきました。法人会員のポイントカードも発行されており、
その利用範囲はますます広がっています。
今回はそのポイントサービスの値引率と
ポイントサービスを利用した場合の会計処理について考えてみます。
まずはポイントサービスの値引率についてです。
家電量販店等での10%のポイント還元ですが、
値引きという点で考えると、10%の現金値引のほうが有利です。
10%ポイント還元=9.0909%の現金値引となります。
これを以下の例を使って証明してみます。
例:
家電量販店等で10,000円の消耗品を購入し、
買い物時に10%のポイント還元があると仮定します。
ポイントは支払った現金の額に対して10%発生します。
これを仕訳で考えてみます。
1.買い物時
消耗品費9,000円/現金10,000円
ポイント1,000円
2.ポイント使用時
消耗品費9,100円/現金9,000円
ポイント900円/ポイント1,000円
この2つの仕訳をベースに考えますと、実は、
20,000円の商品とポイント900円を現金19,000円で取得したことになります。
これを値引率で考えると100%-(19,000円÷20,900円)=9.0909%となります。
以上のことより、10%の現金値引のほうが、10%のポイント還元よりも
少しだけ有利だという結論になります。
というわけで、買い物をするときは現金値引きをお勧めします。
次にポイントカード(ポイントサービス)に関する会計処理についてです。
実は、現在、日本には、ポイントサービスに関する個別の会計基準がありません。
ポイントカード等を発行している各社で会計処理はバラバラなのです。
(最近、ようやく話し合いの場が設けられたような状態です)
税務の方では、法人税法の基本通達9-7-2・9-7-3・9-7-4で、「金品引換券付販売」というものが
ありますが、これはポイントの発行者側についての規定であり、使用者側について
規定しているものではありません。ポイントの使用者側については、法人税法上規定がないため、
おそらく誰も明確に答えられないと思います(近い将来法整備が進むとは思いますが)。
ただし、個人については、所得税法基本通達34-1の一時所得関係の通達に
「法人からの贈与により取得する金品」の規定があるため、
これを準用される可能性があります。
前置きが長くなりましたが、まずは発行者側の処理について考えてみますと、
例:
現金で10,000円の買い物をした場合、10%のポイントが発生し、
その後、ポイントを利用して5,000円の買い物をしたと仮定します。
(ポイント使用時のポイント発生は今回は考慮しません)
1.ポイント発行時
現 金10,000円/売 上10,000円
発行ポイント1,000円
(このときポイントに関する処理はありません)
2.ポイント使用時
現 金4,000円/売 上5,000円
売上値引1,000円(ポイント部分に該当)
又は
現 金4,000円/売 上5,000円
販売促進費1,000円(ポイント部分に該当)
3.決算時
ポイント引当金繰入1,000円/ポイント引当金1,000円
又は
販売促進費1,000円/ポイント未払金1,000円
このポイント引当金の繰入に関しては、税務上、簡単には損金経理できません。
これらについては法人税法基本通達9-7-2・9-7-3・9-7-4にあります。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_01.htm
通達については、上記の国税庁のHPにありますので、ご確認ください。
それらを簡単に説明しますと
9-7-2「金品引換券付販売に要する費用」
つまりポイントが利用されたときに損金にするようにという内容です。
9-7-3「金品引換費用の未払金の計上」
(ポイントの金額)×(事業年度に発行したポイント数)
発行したポイントを円換算するという内容です。
それを未払金として計上しても良いという内容です。
9-7-4「金品引換費用の未払金の益金算入」
9-7-3のようにポイントを未払計上しても良いけれど、
翌年には益金算入するという内容です。
(ポイントの期限がある場合は期限日に益金算入するという内容です。)
上記の処理と異なる内容が、昨年の夏に国際会計基準から発表されました。
国際会計基準によると、ポイント発行者側の処理は、
「ポイント相当分については、将来使用が見込まれる部分について、
売上から控除するとともに負債に計上する。」とあります。
つまり、仕訳で表すと下記のようなカタチになります。
1.ポイント発行時
現金10,000円/売 上 9,000円
/ポイント1,000円(負債)
2.ポイント使用時
現 金4,000円 / 売 上5,000円
ポイント1,000円
3.決算時
処理なし
それと先日のニュースでも取り上げられていましたが、
アメリカが国際会計基準の採用を認めたということですので、
これで国際会計基準が世界標準となる可能性が高まりました。
日本でも2011年までに日本基準を国際会計基準と共通化することを目指しているため、
上記のような処理が主流になってくることが予想されます。
(しかし、売上を減らして負債に計上するとなるとポイントを発行している
企業の業績に大きく影響するので、徐々に動かしていくと考えられます。)
ただ税務の方はおそらく現在の通達がそのまま残るのではないでしょうか。
次にポイントの使用者側の会計処理についてです。
例えば、家電量販店等で3万円のプリンターを、ポイント1万円分を使って、
購入した場合、現金2万円とポイント1万円分を利用して購入したことになります。
(消費税についてはこのケースでは考慮しません)
家電量販店側の処理が「売上値引き」や「販売促進費」で計上しているため、
1万円分の「値引き販売」と考えて、支出した金額で取得したことになります。
仕訳であらわすと
例:
消耗品費(プリンター)2万円/現 金2万円
というカタチになります。
複式簿記を厳密に取り入れた場合はポイントについては以下のような
「収入」として処理を行うのが妥当だと考えられます。
例:
消耗品費3万円/現 金2万円
/雑 収 入1万円
金額によっては、ポイントのみでの支払も可能になってきますので、
例えば1万円のデジカメを、ポイント1万円分で取得した場合は、
例:
消耗品費1万円/雑収入1万円
このような少額の取引については、収入と支出が同額であるため、
利益にはほとんど影響がありません。
上記のような少額の取引については、ほとんど影響はありませんが、
固定資産の取得等については、取得価額が変わってくるため注意が必要です。
特に10万円・20万円・30万円の境界部分では注意が必要です。
(10万円未満であれば消耗品、20万円未満であれば一括償却資産となり、3年間で償却、または少額資産として即時償却、30万円未満であれば少額資産として現在、即時償却が可能なため)
例:
1.ポイントを収入と考える場合
器具備品30万円/現 金29万円
/雑収入 1万円
2.ポイントを値引と考えた場合
器具備品29万円/現金29万円(即時償却可能)
この境界部分については、判断が分かれるところです。
おそらく誰も明確に答えることはできません。
前述しましたが、現在、ポイントの使用者側には
法人税法上明確な規定はありません(近い将来、法整備が進むとは思いますが)。
結局のところ、ポイントを「値引」と考えるのか、「収入」と考えるのかは
「自分で判断するしかない」という結論になります。
少し長くなりましたが、今回はポイントカード(ポイントサービス)についてのコラムでした。
これより先の詳細を知りたい方は当事務所までご連絡ください。