昨今、相続税申告の対象者の増加は、平成27年度改正に伴う基礎控除の引き下げの影響を受け、10ヶ月の申告期限の到来とともに、顕著に現れております。
ここで、あらためまして平成27年1月1日以降の相続に適用される主な改正点は、次のようになります。
①、遺産にかかる基礎控除に引き下げ(負担増↑)
(改正前)
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)を遺産総額が超える場合に申告が必要。
(改正後)
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を遺産総額が超える場合に申告が必要。
②、相続税の最高税率の引き上げ(負担増↑)
各法定相続人の取得金額 | (改正前)税率 | (改正後)税率 |
~ 1,000万円以下 | 10% | 10% |
1,000万円超 ~ 3,000万円以下 | 15% | 15% |
3,000万円超 ~ 5,000万円以下 | 20% | 20% |
5,000万円超 ~ 1億円以下 | 30% | 30% |
1億円超 ~ 2億円以下 | 40% | 40% |
2億円超 ~ 3億円以下 | 40% | 45% |
3億円超 ~ 6億円以下 | 50% | 50% |
6億円超 ~ | 50% | 55% |
③、税額控除の引き上げ(負担減↓)
- 未成年者控除~20歳までの1年につき税額控除できる額
(改正前)6万円
(改正後)10万円
- 障害者控除~85歳まで1年につき税額控除できる額
(改正前)6万円(特別障害者12万円)
(改正後)10万円(特別障害者20万円)
④、小規模宅地等の特例の適用範囲の拡大(負担減↓)
- 居住用の宅地等の限度面積の拡大
(改正前)限度面積240㎡(80%評価減)
(改正後)限度面積330㎡(80%評価減)
- 居住用と事業用の宅地等を両方選択する際の適用面積の拡大
(改正前)居住用240㎡+事業用400㎡⇒合計400㎡まで適用可能
(改正後)居住用330㎡+事業用400㎡⇒合計730㎡まで適用可能
上記のように①の改正点(いわゆる従前基礎控除の6掛け)が対象者の増加に大きくかかわっております。
しかし、④の小規模宅地等の減額計算の拡大で相続税の課税が無いケースもありますが、この特例を受けるためには税務署に対し、遺産相続に関する一連の書類を整備したうえで、相続税の申告が必要となります。
同様に、相続税の申告以外でも相続人は、遺産相続をする場合、次のような一連の書類の準備が必要となります。
まず、死亡した本人(被相続人)と相続人の双方を確定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や転籍や婚姻をしている場合には除籍謄本が必要となり、あわせて相続人全員の戸籍謄本と住民票も準備しなければなりません。
また、遺産分割協議で相続をした場合には、遺産分割協議書や印鑑証明書もそろえなければなりません。
ここで法務省が来春から開始する新制度(平成28年7月6日、日本経済新聞朝刊掲載)によると、現在、複数の地域での法務局の不動産相続登記や金融機関の預貯金の相続を申請する場合、そのたびに上記のような書類が一式必要でしたが、最初に申請する法務局で証明書を発行してもらえば、別の法務局や金融機関ではその証明書のみで申請できるようになります。
これにより、書類の不備による再提出が求められることも、また、金融機関が複数ある場合の確認作業も各金融機関ごとで行う必要も無くなり、無駄な労力の削減と手続に要する時間が短縮されることになります。
今後、相続税の申告における添付書類も、この証明書の提出により簡素化されることになるのではないでしょうか。