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税理士コラム

ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取り扱いについて

ゴルフ会員権を譲渡したときの取得費の取扱いについて、2012年8月23日に国税庁のホームページで公表されました。

ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取扱いについて
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/golf/01.htm

更生手続等により優先的施設利用権のみとなったゴルフ会員権をその後譲 渡した場合の譲渡所得に係る取得費の計算
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/joto/07/05.htm

 2012年6月の東京高等裁判所の判決を受け、国税庁はゴルフ会員権の譲渡所得の計算方法を変更しました。これにより、過去に破たんしたゴルフ場の会員権(預託金が全額カットされた会員権)を売却した人たちは所得税の還付を受けられるかも知れません。(預託金債権の一部が切り捨てられたケースは従来どおりの計算方法になります。)

 所得税法上、ゴルフ会員権は「生活に通常必要でない資産」とされていません。このためゴルフ会員権の譲渡損失は他の所得との損益通算が認められ、譲渡収入から取得価額を差し引いた金額が譲渡損失ならば、確定申告を行うことにより、その譲渡損失を損益通算し、所得税を減額することができます(もちろん譲渡益なら所得税が課税されます)。

 これまでの預託金制のゴルフ会員権の譲渡所得の計算方法は、その取得価額について、ゴルフ場が破綻したり民事再生手続に入ったりした場合(預託金が全額カットされた場合)、その会員権の譲渡所得の計算上、当初の取得価額を用いることができず、優先的施設の利用権(入会金・プレー権)の時価を用いることになり、譲渡損失の計上ができないというケースがありました。今回の取り扱いの変更により、優先的施設の利用権(入会金・プレー権)については取得費とすることができるようになりました。(全額カットされた預託金については従来どおり取得費とすることはできません)

 国税庁は、ホームページで、過去5年以内にゴルフ会員権を譲渡した人に対し『国税通則法の規程に基づき、この取扱いの変更を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納め過ぎとなっている所得税が還付となります』と発表しています。この取得費の取り扱いの変更により、所得税が還付されるかもしれない方は、2ヶ月以内に手続きを行いましょう。(更正の請求については、法定申告期限から5年を経過している年分の所得税については、減額できないこととされていますので、今回の取り扱いの変更により所得税の還付が期待できるのは過去5年以内の譲渡に限られてきます。)

 ただし、注意点として、ゴルフ会員権の入会金と預託金の額を把握しておく必要があります。新規募集でゴルフ会員権を取得した場合は、払込金額等である程度把握できますが、会員権業者等の第三者から取得した場合は、入会金の額まで把握できていないケースがあるようです。更正の請求を行う際、添付書類として、入会金と預託金 の額がわかる書類を準備する必要がありますので、お気を付けください。